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ディスプレイにおやすみコールの通知が現れた。声紋認識センサーを起動させて手早く通話ボタンをクリックする。
「お電話ありがとうございます。こちらはおやすみコールセンターです」
「あの、私……薬を、沢山飲んじゃって……。もう死んじゃうのかな……」
薬。死んじゃう。
キーワードを入力し声紋認識センサーを起動させた。
NO,127654A:ロングコース希望
性別、女性:20代~30代
健康状態:チェックレベル4
声紋に震えを感知。精神的、
肉体的異常発生の恐れ
→より詳細なデータ分析を行いますか?
【 YES / NO 】
「お薬をお飲みになったのですか?」
YESをクリックし発信元の調査をスタートさせる。発信場所は都内のマンションの一室。女性の一人暮らしのようだ。女性の名前や病歴などがデータベースから送信されてきた。
「はい、色々なものを……沢山……わたしぃ」
「お飲みになったお薬の名前はわかりますか?」
「えっとぉ……」
イヤホン越しに呂律の回らない声が薬の名前をいくつもあげる。つっかえつっかえの聞き取りにくい言葉を耳で拾いながらデータに入力していく。
種類。量。経過時間。
おおよそのデータを作成すると通話を続けながらデータを救急センターに転送した。
意識の混濁レベルからしてこのまま眠ってしまうだろう。薬物の過剰摂取による死亡の危険はない。だが吐瀉物による呼吸困難からの危険が考えられたのだ。転倒にも注意しなくていけない。
「もう、クラクラして、フラフラで……」
「ゆっくりとベッドに横たわってください。大丈夫です。ゆっくりと」
「わたしぃ……もうわかんなくなっちゃってぇ……」
「大丈夫です。おやすみなさい」
救急センターの車両がクライアントの家に向かったことを確認し電話を切る。もう朝の五時になっている。退社時刻だ。報告書をデータ転送し引き継ぎを終えると私は職場を後にした。
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