第2章

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第2章

「それではおやすみなさい。……ふう」  ディスプレイに通話終了の文字が表示されたのを確認してため息をついた。最近頭が重い。肩も首も凝っている気がする。座ったままの勤務が良くないのかもしれない。 「先輩、お疲れですか?」  最近入ってきた新人の女の子に声をかけられた。仕事も手際よくこなし気も利く良く出来た新人だ。 「そうみたい。身体が重くて肩こりもひどいの」 「大変ですね。先輩仕事熱心ですもんね! ちゃんと休日はゆっくりしてますか? きっと充電不足ですよ」 「そうかもしれないわね」 「えっとですねー、肩こりにはお風呂でマッサージがいいんですよー」  端末を開いてマニュアルを読み始めた新人に私は笑ってしまう。 「仕事熱心なのはあなたの方じゃない」 「あっ、つい癖で。恥ずかしいなぁ、これが職業病ってやつですか?」 「そうかもね」  ニコニコと笑う新人に頷き返す。この子の応対はロング通話のお客様には特に受けが良い。私はもともとショート通話担当のオペレーターであった。ロング通話の部署が人員不足に陥り私が回された形だ。  私は世間話をしたりこちらから何かを話すのは苦手だ。この子のように上手に会話のやりとりをすることが出来ない。  彼女はマニュアルだけではなくそういった話も得意であった。もともとおしゃべりな子なのだろう。ロング通話のオペレーターには適任である。
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