序章

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煙は好きだ。自由であり、環境に対しては束縛的でもある。 そんな自由が私にも欲しい。鳥籠の中の鳥は自由に飛べないのだ。 口に含んだ煙を呑む。この舌にざらつく苦味が今の私と似ている気がして親近感。 煙を吹いてまたアイツを見ると敵を沈めていた。 この速さが天才と呼ばれる所以である。 さらに陳腐な表現をすると『最強』である。 『最』も『強』いと書いて最強。なんとも簡単で嘘臭い評価なのだろう。 後始末をしてこちらに向かってくる。 ヘラヘラ笑いながら私に帰りを促すので素直に従う。あまり良く思ってないことが顔に出てないかな。少し不安。だって私いらないじゃん。 普通の感性であれば、これが格好良いのだろう。私もそうなのだろうと思う。 誰も信じないけれども、あれくらい私にも余裕に出来る。誰にも言っていないけれども。強がりではない。 どうせ口にしたところで凡庸な連中と一緒で口だけだと思われる。事実、何もしていないからである。後ろで見ているだけ。理由は野郎が私を前線に出したがらないこと、合わせて私が前線に出るのを面倒がるからであるが、楽だしいいよね。 なら文句言うなという声が挙がりそうだが、見ててウンザリするのだ。ヤツにもその取り巻きにも。 これからも停滞した日常が続くとウンザリする。悲観しか浮かばない。 そう思っていた時期が私にもありました。
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