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「だから、〝お前は俺を一番に理解してくれてると思ってた”って、言ったろ?」
「理解って……」
さっきもそんな言葉を言われたけれども―…
「何年も……離れてたじゃないですか……」
ポツリ。声にしてしまう私。
私達には空白の時間がある。
こんなに時が経過してしまっていれば、変わらないものと変わるもの。
知っていることと知らないこと。
変わってしまって、知らないことのほうが多いに決まってる……
「だから、希穂を秘書にしたんだよ」
「……だから、って……」
その前に来る言葉をちゃんと言ってくれないと、私みたいな凡人にはちゃんと理解出来ないのに。
使い勝手が良さそうとか、買収したばかりのホテルの中で一番害がなさそうとか、
そんなことしか思いつかない。
だけど、想像以上―…
想像以上に不安なのかもしれない。
頼くんは、若槻総支配人として私が知っている頼くん像とは違う部分があるのかもしれない。
だから、
少しは気心知れてる私に我儘いったり、からかったりして、息抜きみたいな存在が必要なのかな。
単なる仕事面においての便利じゃなくて、少しだけ気持ちの面で私を傍に置いているのなら―…
やっぱり、私はこの人の力になりたいと思ってしまうんだ。
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