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私、
あれから長い時を経て、やっぱり若槻総支配人と―…!?
と、思ったけれども、
「寝ただけ」
「え?」
「一緒に寝ただけ」
「寝た……だけ……って……」
「懐かしいシチュエーションかもしれないが、何もかも昔通りの事はしていないってこと」
って、ことは……
若槻総支配人の言葉通り、一緒にベッドで〝寝た”〝だけ”……
「何だよ、その安堵した顔は」
「いえ、その……上司と部下で何かあったらマズいじゃないですかっ」
「何故?」
「なぜ、って、同じ職場での迂闊な行き過ぎた交友は……」
「〝迂闊な”関係でなければ問題はないってこと?」
私の髪を掬い取って、若槻総支配人が指に絡める。
「問題ないって……」
「希穂」
「っ」
耳元で、吐息と共に名前を囁かれる。
どうしよう…!
脈が、心臓が、頭が、気持ちが……
パニック状態で、心も身体ももたないっ!
秘めた想いが吐露してしまわないように必死に身体に力を入れて、若槻総支配人に背を向ける。
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