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「社員として?」
「は、はい」
「秘書として?」
「はい……っ」
じっと若槻総支配人が私の顔を覗き込む。
近いですってば。ほんと、勘弁して下さい~…!!
って心の中で叫んだ瞬間、
寝室に響いた携帯電話の着信音。
鳴っているのは私のじゃない。若槻総支配人の携帯だ。
「―…」
若槻総支配人が私の瞳を見つめるものだから、
「ど、どうぞ……」
電話に出てください、と、ジェスチャー付きで言ってしまう。
「―…はい」
気のせいか少しムスッとした声で電話に出る若槻総支配人。
でも、次の瞬間、
「―…」
「……?」
若槻総支配人の瞳がさっきよりも少しだけれども大きく開いたとこ、見逃せなかった。
しかも、
「……ゆかり?」
その口から零れたのは、そんな言葉。
え、何?
そう思ってしまう私と若槻総支配人の瞳が合う。
と、
「あー…その件は今、ここではちょっと」
何だか、歯切れの悪い口調で通話してる。
横目で私を見て、逸らすけれども、また―…チラッと私に視線を向ける。
だから、何……?
その、らしくない電話対応。その視線。何より、その唇から零れた、
〝ゆかり”
女の人の名前みたいな三文字……!
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