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ホワイトデーにした初めてのキスは、ずっと遠くの出来事になっていた。
頼くんに捧げたファーストキスは、唇が近づく瞬間も、重ねた瞬間も、
離れる時までずっと緊張して硬くなっていたのに、
二回目、三回目―…
数が増える度に、とても自然な二人の触れ合いになってるから。
けど、
今夜のキスは、あの初めての日と同じみたい。
私、
とても緊張してる。
お母さんに綺麗に着付けてもらった浴衣が頼くんの手で乱されて、素肌が露わになっていく中で交わすキスは不器用な応え方になってしまう。
「希穂、大丈夫―…?」
「え……」
「まだ希穂が望まないのなら素直に言って」
おでこに一つ、キスをくれた頼くん。
「違うの……」
違うの。望んでいないとか、嫌とかじゃない。
「はじめて……だから……」
初めてだから緊張して、頼くんにどんな風に応えていいのか戸惑ってる。
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