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【絶対なる】一夜【支配9】
六千発の火の花が夏の夜空を華やかに彩る。
色んな形状や色の花火が打ち上げられて、フィナーレには何発もの大きな花が咲き誇る。
最後の一発が名残惜しく消えて、
「……終わっちゃったね」
「うん……きれい……だったね」
そんな言葉を小さく、交わし、
帰路につく人々を誘導するアナウンスが流れる中、
私たちはそっと手を繋いだ。
〝まだ、帰りたくない”
と、お互いの意思を確かめ合うみたいに、喧騒が消えていく会場を歩いた。
だけど、私も彼もまだ高校生で一晩中、この夜の町を彷徨うわけにはいかない。
「そろそろ帰―…」
帰らなきゃ、そう口にしようとした時、
「俺はまだ、帰したくないよ」
彼、頼君は私を見つめて、私の手をさらにぎゅっと握って言った。
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