遠距離(仮)の日々

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 香港から帰国してしばらく経って、祐樹はみやげを持って実家を訪れた。  時間が空いたのは孝弘の出発まではなるべく彼と一緒にいたかったから、孝弘を見送ったあとにしようと帰省を後回しにしたせいだ。  孝弘が北京に発ったのは2日前。  まださびしく思うほど時間が過ぎたわけでもないのに、やはり気持ちがさびしくて、金曜の夜に実家に来た。  さみしがりの子供か、とじぶんでも思うが、孝弘が日本にいたあいだ週末はほぼべったり一緒に過ごしていたのだ。  あの北京出張の前にはひとりで過ごしていたはずなのに、どう過ごしていたのかさっぱり思い出せない。  かといって、今夜はだれかと飲みに行く気にもなれないし、お気に入りのバーに顔を出すのも煩わしくて、みやげを口実に実家に来たのだ。  ようするに、ひとりの週末がいやだったというわけだ。
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