3 燈子の日常

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『ずっと好きでした。結婚して下さい』  ボエ??  屋上は、喫煙スペースになっていた。  昼休憩のさ中、大勢の社員が紫煙を燻らせ、物思いに耽っている時刻。  彼らは一斉に2人を振り返った。  燈子ははじめ、課長の性質の悪いジョーダンだと思っていた。  何故ならば、  至って平凡なOLで、悲しいことにこの3年間、色っぽい話と無縁の世界にいた彼女。  対する彼は、傍目には会社で常にエリートのトップコースを行く29歳。  総務のお局様方が毎年懲りずにやっている 『当社内抱かれたい男ランキング』  で常にトップ5に入る、自他共に認めるイケメン課長だったからだ。  彼女は思わず、彼の額に手を翳した。 「…熱はない」 「や、やだなあ、持ち上げといて『うっそ、本当はク・ビィ~』  とかって落とす気でしょ? 人が悪いなあ、イヨッ、お代官様っ」  真顔の彼に怯えた燈子は、コノコノといつもの調子でおどけてみせた。  が、彼はしーんと黙ったまま、しかめっ面を崩さない。 「……………」 「……まさか…本当に?」  遥か頭上から私を見下ろす彼は(燈子は背が低い)、初めて見るような真っ赤な顔でコクリと一つ頷いた。 「…当たり前だ。yesかnoか」  即断を迫られた私の答えは__  『yes』
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