4 甘い日常

2/6
3483人が本棚に入れています
本棚に追加
/343ページ
「あ~~っと、それより秋人サンこそルンルンじゃないですか」  クロゼットに向かう背中を追いかけながら、燈子はサラリと話題を転じ、誤魔化した。 「ああ、今日、訪問先の商談が整った」 「ほうほう、それは何より」 _良かった、遅刻しなかったんだ_  今朝のことを思い出しながら、燈子は彼が外したネクタイと上着を受け取った。  秋人は、フーっと溜め息を吐いて髪を掻き上げた。  _オオっ!_  実は燈子、  開襟シャツの肌けた瞬間の彼の色香が堪らない。  なので貞淑な妻を演じているのでも、亭主関白をされている訳でもなく、自ら進んでコレをやっている。  彼女は日頃秋人をヘンタイ呼ばわりしているが、自身のフェチズムもかなりのものだった。 「来月の役員会のな、 ……ほんの “手土産” さ」 「お土産ですかあ。いいな~」  その意味がよく分からないまま、燈子はニコニコと相槌をうった。
/343ページ

最初のコメントを投稿しよう!