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午後10時。
2人はいつも、揃って遅い夕食をとった。
秋人はかなりの健啖家だ。
凄い勢いで空けられていくお皿を眺めながら、いつも燈子は感心する。
彼のバイタリティーは、きっと本能的欲求のデカさと正比例しているんだ。
しかし一番の理由は……
自分の料理が上手いお陰だ!
と、燈子は勝手に思っている。
「いえね。こう見えて高校生の頃、中華料理屋さんでアルバイトを…」
「おかわり」
あ、聞いてないや。
午後11時。
燈子は、彼の帰宅前にお風呂を済ませるようにしていた。
『一緒に入りたい』などと駄々を捏ねられては困るからだ。
「いいじゃないか、たまには」
外向けキラキラオーラを纏(まと)って微笑まれると、ついついクラッとイきそうになるが、それを堪えて「ノー」のサイン。
そもそも、女性にとってバスルームは、美しく身を整える作業場。
水面下で必死に水を掻く白鳥のような努力を、好きな人に見せたくはない……
というよりは、以前に情にホダされてご一緒したところエライ目に遭わされたから、警戒しているだけなのだが。
ヤツの甘い言葉に乗せられると、ナニをされるか分かったもんじゃない!
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