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_何だよ、アイツ_
役員会の終了後。
秋人は屋上で一服し、紫煙に思いを巡らせていた。
専務、光仲静也は一流私立大学出身かつ社長の叔父の娘婿、わずか42歳で副社長に続くNo.3の男だ。
社内一の切れ者で次期社長とも噂される一方、目的のためには手段を選ばない酷薄さで、恐れられてもいる。
_さっきの発言に加えてあの一瞥
は、明らかに俺を敵視したものだった。
俺の役員入りに最後まで反対したのもヤツだったと聞いている。
はっ、もしや___
秋人はふと思い当たった。
_昨年の「社内抱かれたい男ランキング」で、10年連続2位だった奴を俺が逆転したせいだろうか…
って、んな訳ないか。
しかし、注意はしておいた方が良さそうだな__
トン。
その時、彼の肩を誰かが軽く叩いた。
「やあ、大神君」
いつの間にか副社長がにこやかに笑いながら彼の隣に立っている。
_来たな、早速のアプローチ_
秋人はまだ半分ほど残っているタバコの火を消すと、彼の世間話に耳を傾けた。
会話の終わりに、ふと彼は真顔で訊ねた。
「僕はね、君を買ってるんだ。どうだい?来週末はゴルフでも」
「……ええ、是非とも」
秋人の返事を聞くと、副社長は機嫌良く去っていった。
_取り敢えず俺は、“副社長派”ってとこか。
一番大きいところだな_
ツルリとした彼の後頭部を見つめながら、秋人はフウッと息を吐いた。
_ヘタは打たない。
あとはゆっくり見定める___
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