5 ライバルは

3/3

3487人が本棚に入れています
本棚に追加
/343ページ
_何だよ、アイツ_  役員会の終了後。  秋人は屋上で一服し、紫煙に思いを巡らせていた。  専務、光仲静也は一流私立大学出身かつ社長の叔父の娘婿、わずか42歳で副社長に続くNo.3の男だ。  社内一の切れ者で次期社長とも噂される一方、目的のためには手段を選ばない酷薄さで、恐れられてもいる。 _さっきの発言に加えてあの一瞥 は、明らかに俺を敵視したものだった。  俺の役員入りに最後まで反対したのもヤツだったと聞いている。  はっ、もしや___  秋人はふと思い当たった。 _昨年の「社内抱かれたい男ランキング」で、10年連続2位だった奴を俺が逆転したせいだろうか…  って、んな訳ないか。  しかし、注意はしておいた方が良さそうだな__  トン。  その時、彼の肩を誰かが軽く叩いた。 「やあ、大神君」  いつの間にか副社長がにこやかに笑いながら彼の隣に立っている。 _来たな、早速のアプローチ_  秋人はまだ半分ほど残っているタバコの火を消すと、彼の世間話に耳を傾けた。  会話の終わりに、ふと彼は真顔で訊ねた。 「僕はね、君を買ってるんだ。どうだい?来週末はゴルフでも」 「……ええ、是非とも」    秋人の返事を聞くと、副社長は機嫌良く去っていった。 _取り敢えず俺は、“副社長派”ってとこか。  一番大きいところだな_  ツルリとした彼の後頭部を見つめながら、秋人はフウッと息を吐いた。   _ヘタは打たない。    あとはゆっくり見定める___
/343ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3487人が本棚に入れています
本棚に追加