6 セレブのランチ

3/6
前へ
/343ページ
次へ
「さあさ、柏木奥様。大神奥様が困ってらっしゃるわ。  さ、そろそろお開きの時間。 ここのデザートは最高よ?」  まだイジり足りず、消化不良といった感じの奥様方を、ショートヘアの美人が手を打って制した。  場を仕切っているこの女性は、光仲専務サンの奥様。  どうやら、助け船を出してくれたようだ。    しかし燈子はすっかりショボくれて、もう何も聞かれないよう、高級デザートに夢中なふりをした。  ハア… _かつて社員だった私は、口さがない噂話をイヤというほど耳にしていた。  ここにいる奥様方の夫、つまり重役の殆んどが、誰かしらとの噂がある。  例えば、柏木常務は会計主任の宮原女史と長いこと付き合っているし、光仲専務は、マーケティング戦略のキャリア、春貝チーフとデキていると専らの噂だった。  ウチのオープンスケベとムッツリスケベ、一体どっちがマシなんだろうか__  下らないコトを考えながら、燈子はすっかり味のしなくなった高級デザートを、口の中に詰め込んだ。
/343ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3499人が本棚に入れています
本棚に追加