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秋人は夢中で駆け寄ると、ピクリとも動かない肢体を見下ろし、その場に愕然とへたり込んだ。
「そ……んな」
現場保存の法則など知ったことか!
秋人は彼女の頭を持ち上げて、血糊が着くのも構わずに、冷たくなった頬に頬擦りした。
「燈子ぉ…」
ん?
これ……血?
何か変だ。首を傾げ、指で掬って舐めてみる。
甘いし。
「…ふみゃ~~」
息してるし。
「おいコラ」
ぺチペチと頬を叩いてみる。
するとピクリと顔が動いて、
「ウ……ウ~ン」
ニヒャッと夢の中で笑い、クルリと向こうに寝返った。
「……………」
ちっくしょおおお!
秋人は激怒した。
この俺に、何回名前呼ばせてんだよ!
怒りが過ぎると、秋人は却って冷静になる性質である。
低い声で一言を発した。
「……襲うぞ」
「!!」
と、被補食者的本能に急にスイッチが入ったのか、燈子はガバっと起き上がった。
「あ、あれ?
ここはどこ?ワタシは誰?
そうだ、晩ゴハンを……
ウッヒャー、もうこんな時間?!」
彼女は焦点の定まらない目で辺りを見回した。
明らかにテンパっている。
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