8 常務のお仕事

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8 常務のお仕事

 さて、秋人である。  彼はいつも奥さんとイチャイチャばかりしているわけではない。 け  会社ではちゃんと仕事をしている。  役付きということで、小さいながらも個室が与えられているのだが、自信家でヤル気満々の彼は、窓際でのほほんと外を眺め、茶を啜っていたりはしない。  彼は常務の中でも自分がかつていた業務部を総括し、決裁権も持っている。当然仕事には詳しいし、人も知っている。  なので、自分よりは年上の部長や課長が次々と持ち込む稟議にも、あーだこーだとケチをつける。  各部長を集めて部全体の方針決定を決めたりもする。  アホに見えても、実はエライさんなのだ。  彼の執務机には今日も山のように懸案事項が積み上げられている。 「とにかく。この件はもう一度考えて。明日10時まで」 「そ、そんなぁ~」  午前中最後の相手、業務課長を下がらせて、ようやく一息を吐いた。 _コーヒーでも欲しいところだ_  フロントロビーの自販機にでも行こうかと、考えていた矢先だった。
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