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「専属秘書、付けたげる」
社長第一秘書兼愛人、松嶋七緒が突然やって来て告げた。
「こんな下っ端常務相手に……随分な厚遇じゃないですか。松嶋さん」
顔をひきつらせつつも、慇懃(いんぎん)に秋人は返す。
かつて社長のカクレミノとして彼女のダミー恋人を演じ、酷い目ばかりを見てきた彼は、この美しい妙齢の社長秘書が死ぬほど苦手だった。
「フフフ…可愛らしい新人さんよ? アナタ若い娘(コ)が好きでしょう?」
「イヤイヤ、お気遣いなく。
確かに女性は皆魅力的ですが、俺としては、使い勝手の良い若い衆の方が…」
お陰で今では『秘書』と名のつく女全てが彼にとっては“鬼門”である。
なので、丁重にお断りしたつもりだったのだが……
「あら、快諾?!嬉しいわあ~。サスガは私の元恋人、大神君!」
「…………」
彼女は秋人の意見など全く聞くつもりはないらしかった。
彼女は特有の美し怖い微笑みを浮かべると、一言付け足した。
「ああそれとね、言っといたげる。彼女、副社長の姪だから、くれぐれも粗略に扱わないでね。
……手も出すなよ」
まじか。
「おいちょっと待て……」
“じゃ~ね~”手をヒラヒラと振りながら、松嶋は颯爽と去ってしまった。
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