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「…………」
「…………」
今、秋人の目の前には若い女が立っていた。
ひどくガキくさい茫洋(ぼうよう)とした女。
今時どこで買ったのか分からないような分厚い眼鏡をかけ、ダッセエ後ろ三つ編みの髪が半分解(ほぐ)れている。
『若い女』どころか、人生に疲れきった隠者のようだ。
紺ストライプのスーツはいかにもこれ一着のリクルートスーツ、しかも見たこともない膝下10㎝丈。
エントリーシートには『美嶋夕貴子(みしまゆきこ)』、年は20歳、短大卒とあった。
言ったら悪いが、彼女の秘書課配属は明らかに人事部のエラーだと、秋人には思えた。
_松嶋のババア、俺に厄介モノを押し付けやがったな_
「よ、ヨロシク…お願い…しまっ」
挨拶すらままならない。
どうやら彼女、秋人のことをやたらと恐れているようだ。
_確か初対面のはずなんだがな_
「大神だ。宜しく…」
気味悪く思いながらも、握手くらいしようかと、秋人が手を差し伸べた瞬間。
「うっ!」
「き、君?!」
なんと彼女、卒倒した。
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