8 常務のお仕事

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 「…………」  「…………」    今、秋人の目の前には若い女が立っていた。  ひどくガキくさい茫洋(ぼうよう)とした女。  今時どこで買ったのか分からないような分厚い眼鏡をかけ、ダッセエ後ろ三つ編みの髪が半分解(ほぐ)れている。 『若い女』どころか、人生に疲れきった隠者のようだ。    紺ストライプのスーツはいかにもこれ一着のリクルートスーツ、しかも見たこともない膝下10㎝丈。  エントリーシートには『美嶋夕貴子(みしまゆきこ)』、年は20歳、短大卒とあった。   言ったら悪いが、彼女の秘書課配属は明らかに人事部のエラーだと、秋人には思えた。 _松嶋のババア、俺に厄介モノを押し付けやがったな_ 「よ、ヨロシク…お願い…しまっ」  挨拶すらままならない。  どうやら彼女、秋人のことをやたらと恐れているようだ。 _確か初対面のはずなんだがな_ 「大神だ。宜しく…」  気味悪く思いながらも、握手くらいしようかと、秋人が手を差し伸べた瞬間。  「うっ!」 「き、君?!」  なんと彼女、卒倒した。
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