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9 燈子のお仕事
妻が。
いつまでも新婚当初のように、ダンナサマの言いつけを守っているとは限らない。
燈子もまた然り、だ。
燈子の新しい職場は、公営の施設と併設された大きな公園内にあるカフェテリアにあった。
午前は子供連れの母親や学生、昼食時には研修生やビジネスマンで賑わい、常に客足は途絶えない。
特に天気の良い日などは、一時の羽休めにと太陽を浴びにやって来る人でいっぱいになるのだが、梅雨に入った今日は生憎の雨。
閑散としたオープンスペースの屋根の下、燈子は同じシフトのタイ人、パナラットさんとお喋りに時を費やしていた。
「オーウ!
トーコはハズバンド、イルのか。マダ、ガールかとオモタヨ」
「え~、そーお?
若く見えるかな~?」
「ワタシもハズバンド、クニにイルヨ!」
「へぇぇ、パナさんも。全然見えないよ~」
会話は微妙に噛み合っていないが、大まかな気性が似ているためか、2人は大いに盛り上がっていた。
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