9 燈子のお仕事

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 と、向こうからやって来たビジネスマン風の男が席に座るのが見えた。  こんな雨の昼下がりに珍しい来客だ。 「ちょっと行ってくるね。厨房をお願い」 「オッケー」    たまに注文を聞き間違えるパナさんを気遣い、燈子は注文へと走る。 「いらっしゃいませ、ご注文は如何いたしましょうか?」  キュートスマイルで腰を折る。  燈子は、こういうのが結構好きだった。  お客さんは何だか酷く迷っているようだ。 「う~ん、チーズケーキセットにしたものか、それともイチゴショートにするか…」    燈子は珍しくてついマジマジと、その様子を見つめた。    端正なお顔の男の人なのに…  クスッ、  なんだかちょっとカワイイかも。  しっかしこの人、どこかで見たような…    と、視線に気付いたのか、彼がメニュー表から顔を上げた。  しまった!  思ったのも束の間。  彼は燈子の顔をじっと凝視し、首を傾げた。 「……あれ?  君、確か大神君の…」 「あ、あなたはもしや」  言われた燈子は驚いた。 「み、光仲専務ではないですか!」
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