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取締役専務、光仲静哉(みつなかしずや)。
あの会社にいた女子社員ならば、彼のコトは誰でも知っている。
気品に満ちた身のこなし、切れ長の瞳の雅なルックス。
一部では次期社長とも噂される、抜群の実力者で、社内「抱かれたい男ランキング」ベスト3を10年間キープし続け、女子からは常に絶大な人気を誇る。
噂では、お堅いキャリアで高名な春貝チーフを愛人に落としてしまうなど、アッチも相当ヤリ手なんだそうだ。
その彼が…
(ウワー、あの光仲専務がケーキセットで悩んでる!)
「いやあ、恥ずかしいな。大神さんにそんな風に言われたら」
光仲専務は少し頬を赤らめながら、眉尻を下げて微笑んだ。
燈子はハッと口を押さえた。
「す、スミマセンっ。声、出ちゃってましたか?」
「いや、いいんだ。
実は…甘い物が好きでね。
社の人間には見られたくなかったから、こんな雨の日にここまで来たんだ。
ああ、そうだ。
大神常務には内緒で頼むよ?」
照れ臭そうに微笑んだ顔に、燈子は思わず頬を緩めた。
「ええ、モチロンですよ。
ところで、専務はよく私の事ご存知でしたね。
社ではあまり面識なかったのに……」
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