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5 ライバルは
5月1日。
秋人の会社では、今年第1回目の定例役員会が行われていた。
彼の役職デビューとなるこの会議は、初顔合わせとはいえ、決算の報告と6月の株主総会を控えて重たい議論の場になる。
それぞれの自己紹介の後。
最後に、社長が新顔の秋人の横に立って紹介した。
「若輩者ですが…」
サワヤカに心にもない挨拶を述べるが、メンバーはまるで興味なさげなシラケムード。
しかし彼はバカではない。
10名の役員の中、新参者の末席常務がイイコトを言おうとしても、悪目立ちだと知っている。
紹介もそこそこに早速始まった熱い議論。その行方を秋人は黙って見守った。
と、
「いやぁね、今年の決算は上出来だ。
懸案だった北九州支社を、ここにいる大神くんが見事立て直してくれたからねぇ。
それについこないだだったか。
あの難しい、小田原会長との取引を決めたそうじゃないか」
ふとしたきっかけに、三鷹社長がのんびりと鷹揚な声を響かせた。
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