潮騒

5/6
前へ
/6ページ
次へ
水平線に真っ赤な太陽が沈んでいきます。 ベスは海辺のテントの前に座り込んでいました。 ここにいればおじいさんが帰ってくるかもしれません。 一晩中、ベスは待ち続けました。 日が昇ってもおじいさんは現れませんでした。 また日が沈んでは昇ります。 月が満ち、欠けていきます。 海辺へは時々人が来ました。 足音を聞くたびにはっとしますが、大抵は街の人か旅人でした。 彼らもベスを避けて近付こうとはしませんでした。 ベスはテントの前から一歩も動きませんでした。 一睡もせずに朝も昼も夜もただひたすらに待ち続け、次第に衰弱していきました。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加