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……ふぅ。
ちょっと落ち着いた。
さて、彼女を起こして本番をやろう。
ゆっくりと目を開けると、そこには彼女が居た。
いや、さっきも居たんだが…しっかりと目を開いて、僕のことを見ていた。
「…!?!? いてっ!」
「あ、だ、大丈夫!?」
僕は声にならない悲鳴を上げながら椅子から転げ落ちた。
数分かけて心を落ち着かせ、改めて今までの事を謝罪した。
の、だが。
「え、えっと、じゃあ君はずっと寝てるフリしてたの?」
「うん…。ごめん、騙してて」
観察していたのは彼女も同じだったらしい。
僕がここに現れるようになってから、途中で起きてそのまま寝ているフリをしてたのだとか。
「僕が何かしないか警戒してたのか」
「ち、違うよ。ただ、面白い人だなって見てただけだよ」
なんだそれ。
面白い事何もして無いと思うんだけどな。
しいていえば昆虫図鑑を必死に読んでいたり、本を逆さまに持っていたことくらいだろう。
「それで、枕くれたから…お礼に栞を渡したかったの」
「え、これ僕がもらってよかったの?」
かばんから栞と手紙を取りだすと、彼女はコクンと頷く。
本を読んでるから好きだと思ってしおりをくれたんだろう。
「あ、じゃあこの手紙も僕の?あけていい?」
「え、あ、うん…。でも、あんまり意味無くなったかも…」
前からずっと気になってたこの手紙。
彼女からは歯切れの悪い返事が返ってきたけど、好奇心に負けて封を開けてる。
そこには、枕をありがとうというお礼の一言。
それと、なにやらアルファベットの羅列が。
「…これってメールアドレス?」
「うん。仲良くなれたらいいなって思って」
顔を少しだけそらして恥ずかしそうに言う真姫さん。
さっきからその表情に見惚れてしまう。
…もっと早く話しかければよかった。
「そういうことか…。じゃあ、夜にメールするね」
「…うんっ。あ、でも、お付き合いとかはまだ…ごめんなさい」
え、何急に。
…って、さっき僕が好きとか言ったんだった!
「ち、違う違う!あれは口がすべ…じゃなくて!」
「ふふっ。君、やっぱり面白い」
この日から、図書室に通うことに加え、夜に真姫さんに「おやすみ」メールを送る習慣ができた。
いつか隣でおやすみを言えるようになりたいな。
なんて夢が叶うのは、もうしばらく先の話となる。
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