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春眠暁を覚えず。
意味は忘れたけど、とにかく眠くなる春後半の5月半ば。
高校2年の何でも無い学校生活、代わり映えの無い日常今日も送る。
そんな繰り返すだけの毎日でも飽きないのは、小さな楽しみがあるからだと思う。
ガラにもなくそんな事を考えてる僕にも、もちろん楽しみはある。
「スー…スー…」
放課後の人気の無い図書室。
そこで本も読まずに机に伏せ、顔だけ横に向けて寝ている女の子がいる。
その女の子を本を読むフリをしながら眺めるのが、僕の楽しみだ。
火曜日と木曜日の放課後に必ず現れ、いつも本を読まずにこうして寝ている。
参考書を借りようと図書室に訪れたとき、その寝顔に一目ぼれしてしまった僕は、彼女の寝顔を眺めるために図書室に通っている。
…あまり自慢できる趣味では無いが。
彼女が週2回必ず来る理由も、寝てる訳も分からない。
それどころか、確か同じ学年だった…程度しか知らない。
それなのに、幸せそうに寝ている顔を見ているだけで、こちらまで幸せになってくる。
不思議なものだ。
「…ん…」
「!」
寝ている彼女が身動ぎをしたので、慌てて視線を正面に戻して本を読んでいるフリをする。
…って、この本。
適当に取ったが、昆虫図鑑じゃないか。
数十分前の自分に呆れる。
それから少し間を開けて彼女に視線を戻すと、彼女は目を覚ましてはいなかった.。
8人テーブルの対角に座る彼女は、相変わらずこちらに顔を向けたまま、静かな図書室で僅かに聞こえる寝息を立てている。
…可愛い。
あんな子がもし恋人だったら…隣に座って、あの頭を撫でられるんだろうな。
今は週2日しか見れないけど、休みの日にも会って一緒にお昼寝したり、おやすみとかおはようとか言えたら幸せだ。
彼女を眺めているうちに、完全に自分の世界に入ってしまい、次に気がついたのは6時の10分前だった。
「やば。そろそろ帰らないと」
彼女はいつも6時には目を覚まして帰宅する。
本当に…何しに来てるんだろう。
とりあえず、彼女より先に荷物をまとめて図書室を出る。
ちなみに、図書室の受付をしている男子も寝ていた。
…次見れるのは来週か。
待ち遠しいな。
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