眠る姫と僕の習慣

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そんな事があった2日後の木曜日。 懲りずに僕は図書室に来ていた。 光景は一昨日と同じ。 寝ている彼女を僕が眺めているだけ。 一昨日バレてたら、たぶん彼女はここには来て無いと思う。 寝顔を見られ続けてたとか知られたら、さすがに気持ち悪がられるだろう。 前は無意識で逃げたけど、これからも細心の注意を払いつつ、観察しないと。 万が一の為に、マスクとサングラスでも持ってくるか? …いや、それはもうアウトだな。やめよう。 どんだけ必死なんだとか自分につっこみつつも、視線は彼女から離さない。 本当に何してるんだろうと言う感じだけど、これが今の楽しみだから仕方無い。 そのまま5時半ごろまで過ぎる。 今日は途中で起きなかったので、気持ち的には平和だったけど、ちょっと残念にも感じた。 まぁいい。 今日は別にやりたいことがあるし。 僕は教科書も大して入っていない自分のカバンを漁る。 手探りだけで目的の物を見つけ、テーブルの上に一度出す。 …これでよかったのかな。てか、こんな事したら気味悪がられるかな。 テーブルの上においたあるものを眺めて、今頃そんな心配をする。 もう殆ど後には引けないのに。 数分悩んだ挙句、ある作戦を決行する事に決めて静かに立ち上がる。 そして、テーブルの上に一度置いたものを持ち、彼女の正面の席まで一切足音を立てずに移動する。 彼女は同じ姿勢で眠ったまま。 そのまま起きないでね…。 息を殺して体を近づけ、手に持っている物を寝ている彼女の前に置く。 しっかりと置けた事を確認すると、事前に準備しておいたメモをその直ぐ横に置く。 これなら、たぶん受け取ってもらえると思う。 ミッションを終えて、抜き足差し足で自分の席に戻る。 早めだけど今日は帰ろうと、自分のカバンを持って一息つく。 …喜んでもらえたらいいな。 喜んで笑っている彼女の顔を想像なんかしながらカバンを肩に担ぐ。 やば…顔がにやけそうだ。 ガンッ 「ん?…?」 僕はすぐさま逃走した。 担いだカバンが椅子に当たって、彼女が起きてしまったから。 危ない…。 ここでばれたら何も意味が無いだろ。 家に帰るまでが遠足だ。 テンパって訳のわけの分からない事を自分に言い聞かせながら、この日はさっさと家に帰った。
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