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2日後の木曜。
初めて図書室に行くことが戸惑われた。
火曜日、緊張しない為とか言って目を閉じたバカな僕は、なんとそのまま寝てしまった。
問題は寝てしまった事じゃない。
図書室が閉められるまで起きなかった事でも無い。
『ありがとう』
気づいたら、そう書いてある手紙が僕の目の前に置いてあった。
状況から考えて、彼女が書いたんだろう。
つまり、彼女に僕の存在がバレた。
もう図書室に行くこともできない。
そんな僕は、何故こうして図書室の前に立ってるんだろう。
無意識というか、既に習慣付いてしまったんだろう。
そして、その中には。
「…寝てる…」
大して頭も働かさず、扉を開ければやはり彼女はいつもの場所で寝ていた。
なんかホッとして中に入る。
また適当な本を手にとり、前回僕が寝てしまった席に座る。
…ここがリスク高いのはわかってる。
でも、折角近づけたんだからそれを利用しない手はないじゃないか。
今日も彼女はぐっすりだ。
正直本を読むフリが必要かわからなくなってきた頃だけど。
でもきっといざと言うときに役に立つだろうから。
…いざと言うときってどんなときだ。
「眠り姫ー。あ、やっぱここで寝てたー」
「ん…ん?」
突如聞こえた声にビクッと体が反応する。
慌てて体を机に向け、本が正しく読める状態である事を確認する。
…いざというとき、きたーーー…。
「ほーら、今日カラオケ行くって約束してたじゃん。忘れてたでしょ」
「ぁ…忘れてた。ごめん」
顔は見えないけど、彼女の声を初めて聞いた。
寝起きだからか、やんわりとした、どこか守ってあげたくなるような声。
その声にも僕は惹かれてしまって、既に女の子の事を好きになっている事を実感した。
気分が高揚する。
「あ、もしかしてそのままばっくれて例の彼氏のとこに行く気だった?」
「か、彼氏じゃないよぉ。い、今その話やめよう?」
そしてその感情は一瞬で沈下された。
やっぱ彼氏いたのか…。
いや、でも否定したな。
しかしその否定の仕方は、満更でもない感じの相手ってことか…?
ハッキリとしないまま、眠り姫と呼ばれたあの子と友達は図書室を出て行った。
何だこのモヤモヤ。
僕の目的は彼女の寝顔を見るだけだったはずなのに。
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