眠る姫と僕の習慣

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木曜日。 ついに恐れていたことが起きた。 僕がストーカーとしてつかまった。 訳では無い。 何時もより少し遅めに教室に出たけど、いつもいるはずの彼女は、寝てるどころか図書室の何処にも居なかった。 今までの謝罪と、忘れ物を返そうと思ってたのに。 たぶん、避けられた。 「うわ…最悪…」 静かな図書室で思わず独り言をつぶやく。 そのまま、本も持たずに僕の定位置だった場所につっぷした。 …何してるんだろう僕。 女の子のお気に入りの居場所をなくして、一人でこんなところで。 空しい気持ちのまま、窓から見える空を眺める。 夕日がまぶしくて目をつぶれば、少し今居た場所から隔離されたような感覚。 落ち込むには丁度いい。 気づけばまた寝ていたようだ。 人の気配を感じ、うっすらと目を開ける。 思わず悲鳴を上げそうになった。 そこには、最近よく見ていた顔があったから。 眠り姫と呼ばれていた女の子。 あの子が、隣の席に座って僕の事をじっと見ていた。 薄目をしていたのが幸いで、まだ起きたのには気付かれてないようだ。 ただ、今の姿勢では彼女の顔がしっかりと見えない。 え、てか何でいる。 さっきまで居なかったのに…もしかして、HRが遅れただけ? とりあえず、今の彼女が何をしているのかが気になって仕方なかった。 そこで、僕は大胆な行動に出ることにした。 「う…うーん…」 いかにも怪しいうめき声を上げながら、寝ぼけてることを装って頭の位置をずらす。 それから、改めてうっすらと目を開けてみる。 …彼女は、本を読んでいた。 どうやら僕の方を見ていたわけじゃ無さそうだ。 と思ったけど、少ししたら視線が一瞬こちらに向いた気がした。 薄目だからよくわからなかったけど。 その後何度か視線を感じ、身動きも取れないまま数十分を過ごす。 なんだか…こうしていると、落ち着くな。 「…そろそろ、かな」 危うくまた寝そうになっていると、横から声が聞こえて立ちあがった気配があった。 彼女は一度本を置きに本棚を経由し、そのまま図書室を出て行った。 …何とか狸寝入りがばれずに済んだけど。 問題は何も解決してない。 はぁ…もう、変な事するのはやめよう。 段々罪悪感が増えてきた。 次は…しっかり彼女に全てを伝える。
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