君は僕で、僕は君

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 目を開けると、そこには僕がいた。  心臓を鷲掴みされたと錯覚するくらい身体中の血が騒いだ。  僕はすぐに目線を外して、黙考した。これはどういうことだ。僕に似た人が正面にいるだけなのか。そうだとしたら似すぎだ。チラッと目を走らせる。目と目が合いすぐに視線を逸らす。  やはり、僕だ。なら、僕は誰だ。松田太一だ。誰が何と言おうと松田太一だ。けど、正面にいるのも松田太一に見える。  僕は目を伏せて考えを巡らせているうちに混乱の渦に落ち込んでいく。  そうか、もしかしたら正面には鏡があるのかもしれない。  パッと閃いたがすぐに否定する。違う、そうじゃない。ありえない状況に妙な焦りを感じる。  落ち着け、冷静になれと心の中で繰り返す。  僕はどこにいるのだったろうか。あたりに目を向ける。  心地よい揺れと見覚えのある長い通路のような風景。そこには窓があり座席がある。電車だ。  僕は、電車に揺られている。そこに僕と、もう一人の僕がいる。窓ガラスに自分が映っているわけでもない。それなら、すぐにわかる。ほら、あいつの靴を見ろ。僕と同じ靴を履いているじゃないか。モスグリーンのカーゴパンツも同じだ。藍色と白のチェックのシャツもパーカーも一緒だ。  確実に目の前に存在している。眼鏡もしている。  これは現実なのか。突然、背筋に悪寒が走りブルッと震えた。  ダメだ、忘れろ。違うことを考えろ。
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