本当に本当は。

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人の動く気配がする。 ふと、そんなことを思うものの、そういえば、あいつが押しかけて来たんだった、と考えた直後に思い直す。 駅から三分のここは確かに立地条件はいいものの、あいつは彼氏がいるのに終電を逃す度に何故ここに来るのか。 「まぁ、俺が考えても分かるわけがないか」 カタン、と人の動く気配がする。 そしてそれを合図にまた書きかけの原稿を仕上げるために仕事道具でもあるパソコンへと向き直った。 ……少しくらい気にしてくれてもいいと思う。 確かに友人の一人でしかないだろうし、彼には私を含め女友達もいるし。 けれど、こんな夜中に部屋に来て泊まっている女友達なんて、そうそう居ないだろうに。 「………やっぱりそういう風には見てないよね」 はぁ、と部屋の入り口で、パソコンに向かう背を眺めながら、小さくため息を零す。 皆といる時の彼は、静かに騒ぐ皆を眺めているような、口数も少ないタイプで、彼氏とは正反対の立ち位置だと思う。 いかにも活発そうな彼氏と違って、柔らかな雰囲気を持つ彼は、実は自分がこうと決めたことや、筋の通らないことが嫌いだったりと見た目の柔和さとは違い頑固な面が多い。 友達として見れていた頃は、良い奴で止まっていたのに、それが好きな人に変わったのは、たった一言の、何気なく言われた言葉で。 多分、私は、 その言葉を聞きたくて、 わざわざ終電を逃してまで、 彼のところを訪ねるのだと思う。 カタカタとキーボードを打つ音 パラパラと資料を捲る音 時々聞こえる小さな唸り声と 規則正しく時を刻む時計の音 お風呂で温まった身体に ほんの少し回ったお酒と 彼の存在が心地良くて。 彼の背中を眺められるソファに座った私は、眠気に誘われるがまま瞼を閉じた。
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