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こんなに可笑しかったのいつぶりだろう、と鳴り続ける携帯を放置したまま、シンコはふと思い出す。いつかお店に現れた、ひょっとこみたいな顔の、30過ぎのフリーター男。全国各地のKFCをバイクで巡っては、カーネルサンダースと握手してるところの写真を、店の人に撮ってもらっているという。うそお、とシンコが言うと、ぱんぱんに膨らんだポケットアルバムを3冊、安っぽいかばんから取り出して、見せてくれた。「これは栃木県のジャスコ今市店。これは福島県のJR郡山駅前店。あ、いや、違うな、仙台だったかな。いや、えーと…」。
アルバムをめくるうち、カーネルサンダースの怪しげな笑顔と、なにげにピースしてたりするひょっとこ男の顔の対比がヘンで…というのもさることながら、この人何が楽しくてこんなことしてるんだろ、と思ったら、我慢できないぐらい可笑しくなって、一緒についていてくれていたレーナちゃんと、ぎゃは、ぎゃははははと、大口開けて笑っちゃった。
シンコは思い出しながら、はがきの山からまた新しい1枚をとり、ペンを走らせる。
<先日はおいしいメロソをありがとうございました。また、来てくださいね。待ってまーす☆>
シンコはそこまで書いて、ふう、と息をつく。「メリークリスマス」のスタンプは昨日、お店に向かう途中、コンビニで買っておいた。左隅にぶどう色のインクでぺたんと押して、よーしと思いながらふと見ると、メロンって書いたつもりが、どう見ても「メロソ」になってしまっている。メロソ?
メロソ、ぎゃはは、と笑いながら、シンコはクッションの上へ仰向けに倒れこむ。
走れメロソ。
ぎゃはははは!
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