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やあ、諸君。私だ。
今までの行動からわかるように、私は紳士だ。
先回りのプロと言ってもいい。
例えば今、妻がトイレに立っている間に妻のカバンを漁っている"奴"。
どうやら定期入れからわずかにはみ出た写真に気づいたようだな。
私の1つ目の罠とも知らずに。
男は所有欲の強い生き物だ。
女に他の男の存在があると気になって仕方がない。
写真を持ち歩いているとわかれば、写る人物を確認してしまうものだろう。
そこで、私は妻の定期入れに私の写真を仕込んでおいた。
もちろん、全裸のな。
おおっ、吐いてる吐いてる。
さすがに食事処でおっさんの全裸は精神的にくるものがあるだろう。
そうこうしている間に妻が帰ってきた。
止まらない吐き気に喉を抑える彼の背中をさする妻。
刹那、妻の袖から刃物が飛び出した。
当然、私の罠2つ目だ。
彼もわけもわからず背中を貫かれてはたまったものではないだろう。
妻からは見えない位置に仕込んだので、余計に苦しみだした彼に妻は首を傾げる。
私が触らない方がいいのねと、
やや拗ねた様子で席に着く妻。
その目の前の鉄板に、
丁度ケチャップのかかったもんじゃ焼きが焼いてある。
そういえばこの店は鉄板焼き屋だったな…
腹いせと言わんばかりに妻はそれを頬張った。
…ん?ケチャップのかかった…もんじゃ…!?
予期せぬトラップだった。
まさか妻に奴の血がかかった吐瀉物を食べさせてしまうとは…
2人揃ってもんじゃを量産する姿はやはり悲惨な絵面で、とても見ていられない。
救急車を…しまった、携帯を忘れてきてしまった。
こうなれば近くの交番に駆け込もう。
おまわりさーん!あちらの店でもんじゃ生成マシーンと化した人間が!早く救急車を呼ん…
「君、なんで全裸なの?」
…あ゛。
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