08_許せないの

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「自分の家族が営んでいる会社に対し、架空の発注をし、納品をでっちあげ、支払いをしていた」 「どうしてそれで、誰も気づかないんですか」 「ほかの事業部は、本社みたいに人の異動がない。権力を持った人間が長いこと同じ立場に居座り、ルールも自分で作れる。要するにやりたい放題なんだ」 みんなの表情は硬い。 考えていることはきっと同じだ。 ──だからこそ、我々がなんとかしなきゃいけなかったのに。 「どうなるんですか、こういう場合。刑事事件扱いなんですか?」 辻くんが岡本さんに尋ねた。 「そう。幸いと言ってはなんだけど、横領の場合、会社は被害者だ。不正を行った管理職に対し、訴訟を起こすんじゃないかな」 「そのあたりの判断は、今執行部で話されている。正直この件に関して、知っておく以上のことは、俺たちにはできん」 重苦しい沈黙の中、「解散」と部長が告げた。 「ユキさん」 席には戻らず、フロアを出た私を、辻くんが追いかけてきた。 「どうしたの」 「いや、あの…」 手を腰のあたりで拭くみたいな仕草をして、気づかわしげにあたりを眺めたり、私を見たり。 くすっと笑いが漏れた。 私を心配しているんだろう。 「大丈夫だから」 「でも」 「ごめん、ひとりにして」
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