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「兄上が鎌倉に来るみたい…」
真一の部屋にやってきた葵は難しい顔をしていた。
六月二十六日 伊勢国で反幕府勢力が暴れたのちに、幕府軍が来る前に熊野方面に逃げる。
六月二十九日 熊野の竹原八郎入道が護良親王の令旨を受け取ったと称して幕府軍を襲撃する。
反幕府勢力が次々と蜂起して行くのには、楠木正成が和泉、河内で幕府軍を破ったことが大きく影響していた。
正成は反幕府勢力の急先鋒となっている。
幕府は正成打倒のために武勇に優れている葵の兄である下野宇都宮氏の当主 宇都宮高綱を鎌倉に呼び出していた。
「真一、身体を鍛えないとね」
葵は表情を笑顔に切り替えると真一の頬を無雑作につかんだ。
「えっひょっと…」
「謹慎中だからって、毎日ごろごろしてるんだからぁ」
葵はニヤニヤしながらつかんだ頬を伸ばそうとしてくる。
おいっ…マジで痛いよっ…あと近いって
真一は手を振り払うと痛む頬を擦った。
「ふふっ…あたし袋竹刀とってくるから、真一も準備してね」
葵は楽しそうに笑いながら部屋を出て行った。
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