第一回 妖霊星

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鎌倉時代は畳をベッドの代わりにして、着物を布団にして寝ていた。 文観とは明日会えることになった。 文観(もんかん)…後醍醐天皇の倒幕運動に尽力した僧侶だ 怪僧、妖僧なんて言われてたりする 真言宗立川流という髑髏を本尊にしている謎の多い宗派の僧侶である よく考えたら、変な人に会いにいくんだな… 立川流って邪教って言われてなかったけ? 不安だ… このまま深く考えれば考えるほど眠れなくなるだろう。 眞一は瞼を閉じ、頭まで着物をかぶった。 足利華子はまだ眠れないでいた。 本当に未来から人が来たのだ。 日野俊基から倒幕の誘いを受けてから一年ほど立っただろうか。 足利は源氏の嫡流、平氏の風下に立つな 父、貞氏が華子に家督を譲る際に言った言葉だ。 父上は私に北条氏を討てと言っているのだろうか… 華子は貞氏に深く話を聞こうとしたが、「よい、心に留めておけ」と言い何も話さなかった。 北条の世は乱れていた。幕府と荘園領主に納入する年貢を横領する悪党と呼ばれる者たちが現れた。悪党は権威を否定し、自らの武力で領地、物流を支配しようとする反体制的な勢力だった。 その悪党の中でも争いに敗れ物乞いとなった者たちは鎌倉に溢れた(溢者)。 幕府は悪党たちの取り締まりにかかりきりで、溢者たちは放置された。 鎌倉幕府は内管領の長崎氏(円喜、高資)が牛耳っている。 十四代目執権である北条高時は正中三年(1326)に出家し、今は赤橋守時が十六代目執権となっている。 高時は北条氏の嫡流である得宗であるが政治の主導権を握れずにいた。
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