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「若殿様、着きましたぞ」
「眞一、降りますよ」
華子は腰を屈め立ち上がる。眞一もそれに続いた。
館の中に入り、牢屋に案内される。
「ご苦労、これを」
華子は案内した牢番に紙包みを渡した。中には銭が入っている。
牢番は華子に一礼するとその場を去った。
「あなた様は」
文観は格子に近付いて来た。
「足利治部大輔高氏でござる」
「おいで頂き感謝いたしまする、いや、お噂に聞く美しさでございますな」
文観の世辞に華子はにこりと微笑むと眞一に視線を移す。
「おぉ、あのおりの未来人ではないか」
「文観さん、僕は貴方に聞きたいことがあります」
「なんじゃ」
「なんで僕がこの世界に呼ばれたんですか」
眞一の声は震えていた。
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