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眞一は六波羅探題の一室にいた。
文観は未来人を呼び先の歴史が知りたかった、倒幕に勢いをつけたかっただけであり、タイムスリップしてくるのは誰でも良かった。
自分でも未来人を呼ぶことが出来たのは驚きであり、またいた時代に戻す方法は知らないとのことだった。
前日から頭の片隅にあった嫌な予感は当たった。現実にそれを突きつけられてしまった。
涙が溢れ頭が真っ白になった。
何も考えられない。
もう訳がわからない。
「眞一、眞一!」
振り向くと後ろには華子がいた。
「はい…」
眞一は涙でぐしょぐしょの顔で振り向く。
「貴方がこの世に呼ばれた意味はありますわ」
意味…僕が、何が出来る
「あなたは、私と生きるためにこの世に来たのです」
私と…生きる?
「あなたは足利家当主、この高氏を導くために未来から来たのです」
導く…僕が…
「胸を張りなさい、あなたはこの世に来た意味があるのです」
「はい…」
喉から絞り出すように声を出した。
声を出すと、ふと意識が正常に戻ってくる。
「さあ、帰りますわよ」
華子は嬉しそうに微笑んだ。
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