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「あの、僕たちは昨日会ったばかりで」
「ふふっ だってあなた男なのに身体が柔らかいんですもの」
「はい?」
「あなたの身体は武士の身体ではありませんわ
まるで女子のようです
手も綺麗ですわ…野良仕事はしなくても良い身分なのでしょう
かといって貴族でもない」
僕は一般的な学生ですからね
体力に自信はありません
「あなたは不思議な人です」
「だから信用すると」
「はい、そうですわ」
華子はそうして照れたように笑った。
足利館に戻り、部屋に帰ると律が着替えを用意して待っていた。
「眞一さま、お帰りなさいませ」
「ただいま」
部屋に戻ると、どっと疲れが襲う。
帯をほどく。律は手際よく狩衣を脱がし、着物を着せる。
「律さん、ありがとう」
「はい、食事はお持ちいたしますか」
もう疲れたから横になりたいんだけど…
いや、でも元気を出そう…
「うん、お願い」
「はい」
律は嬉しそうに部屋から出た。
眞一は寝付けないでいた。
やはり帰れないというショックは大きい。
昼間は律がいたし、葵も来た。
一人になると悲観的に考えてしまう。
部屋を出て縁側に出る。夜風は冷たい。
その冷たさが冷静で客観的な考え方をさせてくれないだろうか。
夜空を見上げれば箒星が見えた。美しく夜空に輝いている。
消えないうちに願い事をしないとな
眞一は手を合わせ瞼を閉じた。
無事にこの世界で生きていけますように
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