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元弘元年(1331)四月
ん… あれっ
長岡眞一は頭を上げた。
どうやらうつ伏せで倒れていたらしい…
目の前には護摩壇を行っているようで火が焚かれており、暗い部屋を照らしている。
「おぉ!!」
男の野太い声がし顔を向けると、五十代ぐらいの僧体の男が興奮したように唇を振るわせていた。
…えっ
なにこれ…
身体を起こし立ち上がると僧体の男の他にも貴族の格好をした二人の男、若い僧体の五人の男たちがいた。
「文観殿、この者は…」
貴族は興奮を押し殺した声で僧体の男の顔を見た。
「ようやっと成就いたしましたぞ…
帝の御新政も近いですぞっ!!」
帝?御新政?
というか、何処?
なんか時代劇みたいな格好してる人たちがいる…
「のう、お主…」
貴族の男は眞一の前まで来た。
「はっはい?」
「お主は、どこからきたのかの?」
「えっ、あの日本ですけど…」
「おぉっ、日本人やな」
貴族の男は嬉しそうに笑った。
「あの…ここは何処ですか?」
眞一は混乱しつつも言葉を紡いだ。
「ここは大和の般若寺や」
大和って奈良県だよな…
僕は栃木県に住んいたのに、なぜ突然奈良県にいるんだ…
もしかして…夢なのか…
頬をつねってみると痛い。
どうやら夢ではないらしい。
「なんや、未来の呪いか」
「今って何年ですかっ?」
「元弘元年や、まあ北条は帝の改元をよしとせず元徳三年というとるがな」
げんこう…元冦?
いやいや、元冦は年号にはなってないし…
そういえばさっき北条って言ったよな…
北条で元冦じゃないと言えば…
元弘の変か?
まさか…な
「あなた、日野俊基さん?」
目の前にいる貴族は驚いた表情を浮かべ
「そうや、麿は未来では有名なんか」
と言って笑った。
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