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鳥のなく声がする。
眞一は身体を起こした。
朝か…
回りを見渡せば板張りの部屋で壁には明かり取りの窓がある。
窓から入る光が薄暗い部屋を照らす。
木の格子が対面には付いており外には出られない。
昨日の夜、館に連行された眞一は牢屋に入れられた。
泣き喚き、喉が枯れてしまうほど叫んだが何も状況は変わらなかった。
本当にタイムスリップしてしまったのだろうか…
だいたい何で牢屋に入れられなければならないんだ。
拉致監禁だ。犯罪である。
携帯電話の画面を見るが電波はない。電話もかからない。通信、通話不能。
もう泣きそう…というか泣く。
「朝から泣かないで。若殿はあなたを殺したりしないよ」
格子の外から少女の声がする。
涙で溢れた眼を擦り、顔を向けるとそこにはセミロングの美少女がいた。
後ろの髪は中央で纏めてあり、黄緑の紐で縛ってある。
「ねぇ、本当に未来からきたの?」
「はい。自分でも信じられません…」
「そうなんだ…私も信じられないけど、その不思議な服を見ると私がいるこの世とは違うみたいだね」
少女は眞一の洋服をまじまじと見た。
眞一は水色のYシャツに黒いジーンズを着ている。
「あなた、名前は」
「長岡眞一です」
「あたしは宇都宮四郎高貞、足利家で居候してるの」
そう言って少女は微笑んだ。
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