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宇都宮高貞から牢屋から出された眞一は広い板張りの部屋に通された。
上座は畳が敷いてあり一段高くなっており、そこに前髪を真っ直ぐに切り揃え、髪をポニーテールに結った美少女が座っていた。肩から赤いショールを身に着けている。
上座から一段下がった左奥には若い優男が座っており、右奥には眞一を連行した高師直が座っている。
高貞は眞一を部屋の中心まで連れてくると
「座って」
と小声で言い右後方に座った。
眞一も続いて座る。
「四郎殿、ご苦労様」
美少女は高貞に微笑む。その顔は息がとまるほど美しかった。
「さて、長岡眞一」
「はっはひ」
美少女に呼ばれて素っ頓狂な声が出る。
「そんなに怯えなくてもよい」
美少女は柔和な声色で小さく笑った。
「はい…あの貴女は」
「私は足利治部大輔高氏」
「はぁ?」
「これっ」
高貞が嗜めるように眞一の服を引く。
「よい四郎殿…さあ長岡、述べよ」
足利高氏と名乗った少女は興味深そうな視線を向けた。
足利尊氏が自分と同い年の女の子?んなアホな…
試しに史実を言って反応を見てみるか…
「あっいや、足利尊氏といえば鎌倉幕府を倒し、室町幕府初代将軍になった人物でして」
「将軍!」
師直は驚き眞一を見る。
「その話、詳しく申してみよ」
右奥にいる男が師直を制するように眞一を促した。
「足利尊氏は、楠木正成、新田義貞と共に後醍醐天皇の倒幕運動に参加し、鎌倉幕府を滅亡させます。
その後、後醍醐天皇は建武の新政を行いますが武士の不満が噴出、足利尊氏は後醍醐天皇に反旗を翻し征夷大将軍となり幕府を開くのですが…」
「若殿!!」
師直は立ち上がり、高氏の顔を見た。
高氏は眼を閉じ唇をきっと結んでいる。
「その話、まことなのだな」
右奥にいる男が眞一の眼を見る。
「あっあの…僕がいた時代の人は誰も知ってますよ
教科書にも書いてありますし…」
えっ、本当に尊氏なのか… てか、いろいろと喋り過ぎて我が身が危ないかも…
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