瓶詰めの琥珀

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私は中学校を卒業すると、町の中にある公立高校に進学した。 その頃には、私には「ヤミ子さん」という渾名がついていた。 黙ってばかりの私に、何かしらの闇を感じたのか、もしくはどこかしらを病んでいると思われたのかは分からない。 祖母から離れた時の私が、名で呼ばれることはほとんどなくなっていた。 私が通うこととなった堤防沿いにあるその高校は、部活への入部を強制していた。青少年は仲間と切磋琢磨する経験を積んだ方がいい。そんな理由だった気がする。なんとも悪趣味な言い分だ。 仕方なく、私は書道部に入った。週に一度しか活動がない上に、部員はほとんど幽霊部員だったため、祖母の言いつけを守るには好条件だったのだ。 私も、幽霊部員として名だけそこに置いて活動をする気など全くなかった。 部活などせず、祖母のいる家に一刻も早く帰りたかった。 外に出れば、私はヤミ子さんでしかないのだ。 祖母の前では、私は、ただただ愛される私でいられる。 その頃の私にとって、祖母は絶対的な安心そのものだった。 祖母の傍らにいる時だけ、呼吸が楽になった。 だから、最初は、書道部なんてものに打ち込むつもりなど、毛頭なかったのだ。
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