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「だから何回も言うけどよ、鈍感なお前が気づくことに、俺が気づかないはずはないっつーの。で、ワカメとバンビ見て、恋人が欲しくなったか?」
「え……?」
「それとも、俺に『愛してる』って言われたくなったのか?」
「なっ、なんでっ」
また混乱する。突然なにを言い出すんだ。
だいたいどうもしないのにどうしたんだとか、しつこく聞くから言っただけなのに……。
雪人は顔を背けた。
その顔を両手で挟み強引に正面に向けた寿夫が、にやっとしながら言う。
「鈍感!」
「なっ、なんだ、福島っ! さっきから鈍感、鈍感って!」
「鈍感だから鈍感って言ってるんだよ、悪いか」
「悪いッ! だいたいなにを根拠に俺のことを鈍感呼ばわりするのか、お前の方こそちゃんと訳を話せっ!」
雪人はキレた。顔を挟んでいる寿夫の両手を払いのける。そんな雪人の肩を寿夫がそっと抱き締めた。
「そこが鈍感だって言ってんのが、わかんねぇかなぁ……」
「だからなんだっ!」
雪人は腕から逃れようと体を捩って暴れてみるが、寿夫はさらに強く雪人を抱き締める。
「今宮……俺は待つよ……」
「なにっ!」
「仕方ねえから待ってやるよ」
「だからなにをっ!」
「……お前が気付くまでさ……」
「え……?」
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