0人が本棚に入れています
本棚に追加
最近、そのジルベルト家に対する黒い噂が後を絶たず、本格的な捜査に乗り出そうとしていたのだ。クロフォードはその明晰な頭脳を買われ、近衛隊と自警団の上級顧問としても暗躍しており、手始めに王宮の息がかかったスパイをジルベルト家へ従業員として送り込み身辺を調査させていたのだが、用心深いジルベルトはなかなか尻尾を出さず、進展が無い状態となっていた。
「最近、ジルベルト本人ではなく、その交友関係や従業員周辺の方から何かボロが出ないかと調査しておりました所、ジルベルト家で『従業員や使用人としては情報が無い娘』が居ることが判明したのでございます」
「……情報がない?」
「はい。他の者は全員、いつから従業員として働いていて元はどこの家なのか、どのような経緯で奉公人として入った、などがある程度判明しているのでございます。しかし、エラだけは全くと言っていいほど情報がつかめない、との報告が入りました」
「ふむ……」
「そして、ジルベルト本人だけがこのエラの情報を知っている、エラはジルベルトにとって重大な人物ではないのか、という仮説に至りました」
軽く頷きながらアルバクラインは続きを促す。
「そこでふと興味がわき、エラが配膳当番だという報告が入った今日の朝から、食材の出入り業者のフリをして私自身が潜入して参ったのでございます。そして……」
「エラの姿を確認したと」
クロフォードは、はい、と返答した。
「私は……どうすればいいと思う」
「王子が望むようにすればよろしいかと存じます」
「……望み……は、エラともう一度会う事だ」
「……まだ、エラの素性は割れておりません。ジルベルトの悪事が明るみになり、もし仮にエラが何らかの手引をしていた場合、悲しい結末が待っているでしょう。それでも構いませんか?」
「……構わない」
クロフォードは数秒目を瞑り、成長を喜んだ。
「かしこまりました。しかし王子担当執事長として何らかの犯罪に巻き込まれる状況は看過出来ません。まずはエラ自身がどのような立場なのかを調べさせていただきます」
「どうするのだ?」
「私に、策が御座います」
最初のコメントを投稿しよう!