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「しかし!」
「王子!……落ち着きください。力で物事を解決してきた国は必ずと言っていいほど没落していることは、政(まつりごと)の勉学の時間に散々お伝えしているはず。力で解決できない事のために我々には脳があるのです。ここで焦っては全てが水泡に帰す可能性があります。どうかご自重を」
「ぬ……っく……」
アルバクラインは一度上げた腰を苦悶の表情で再度おろした。
「しかし、手をこまねいているだけでは危険な状況であることはまた事実。ここは一つ……罠を仕掛けましょう」
ジルベルトは指定の城下町外れに、数名の部下とともに到着した。ここは彼所有の倉庫が立ち並んでいる。その中の一つが今日の取引場所だ。
最近知り合った東方の商人とやらが、阿片の取引ができないかと持ちかけてきた。もちろん、今まで何度となく阿片の取引は行ってきたが、元々の取引先からの紹介ばかりで、今回のように完全に新規の取引は初めてだ。
そしてどうやら……罠の匂いがする。
もし何か不穏な動きがあればいつでも『処理』できるように、指定の倉庫の両隣は手の者で固め、合図で飛び込んでくるようにしてある。
時間になると、ターバンを巻いた男が従者を数名したがえて倉庫に入ってきた。従者の手には木箱が抱えられている。
「ホンジツハ、アリガトウゴザイマス」
「挨拶はいい。ブツを見せてもらおうか」
「サスガハ、コノクニ随一の商人デスネ。話ガ速クテタスカリマス」
ターバンの男が従者に合図すると、木箱が開けられ阿片生成物の黒い塊が出てきた。ジルベルトは一つ手に取り品質を見定めると、良いだろう、と伝える。
「オモテノ馬車ニ、ノコリノ箱ガアリマス」
ジルベルトは小さくうなずき、部下に「見てこい」と目で合図した。
「で……金額だが……」
「ジルベルトサン、貴方……ウソ、ツイテマス」
「……嘘……?何を言っている」
「先日、貴方ノ使イノ男、尾行シマシタ。ソシタラ王宮ニ入ッテイッタ。貴方、私達ツカマエルツモリ」
ジルベルトは眉間にしわを寄せ、訝しげな顔をする。
「伝言……?何を伝えるために……?私は誰も寄越してはいないぞ」
「ウソツカナイデクダサイ!待チ合ワセ場所ヲコノ倉庫ニ変エルト伝エニ来タ男デス!貴方、ホントハ役人ノ手先!横ノ倉庫ニ手下ガ居ルノ知ッテマス!」
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