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「ちょ、ちょっとまて!待ち合わせ場所にここを指定したのは貴様らだぞ!だからこそ怪しんで手下を待機させ……今……なんか変なこと言わなかったか……王宮……!?王宮だと!?」
「……?ジルベルトサン、本当ニ使イノ男ヲ寄越シテナイノデスカ?」
本気で慌てるジルベルトとその部下を見て、ターバンの男も尋常ならざる事態に気づく。
「嵌められた……!」
ジルベルトの部下は合図を出した。……しかし、何も起きない。
「どうした!何をしている!?」
「ジ、ジルベルトサン、不味イコトガ」
「どういうことだ!?」
半ば狂乱状態のジルベルトが大声を上げる。騙されたと思ったターバンの男が両隣の倉庫に眠り薬の煙を流し込み、部下を全員眠らせてしまっていたのだ。
「全員動くな!取り押さえろ!」
ドアが蹴破られ、王宮近衛隊が突入してきたのはその時だった。
同時刻、ジルベルト家屋敷の大広間には家族から使用人まで全員が集められ、全ての女性に、順番に靴を履かせていた。その隙にスパイの男とアルバクラインは、庭の草木で不自然に覆われた入り口を見つけ、地下牢の中にいたエラにビードロの靴を履かせた。
あの日、階段に忘れられた靴には、エラが一時期から行方不明になっている、ある貴族の娘であること、そしてその父は少量の毒を盛られジルベルト家の息がかかった何処かの病院に幽閉されており、父を殺さない代わりに脅迫に屈している事が書かれた手紙が入っていた。
この忘れ物自体が、エラの作戦であり決意だったのだ。おそらくは当日発生したジルベルト家での仕事のトラブルというのも、エラが仕組んだことなのだろう。
クロフォードは靴を拾い上げたときにその手紙を見つけ、王子には伝えず裏取りに奔走すると共に、今回の策を練っていた。
ジルベルト家は阿片取引に関わる罪とその他余罪で一切の財産没収と国外追放。エラの父は王宮御用達の医院へ移し、回復次第、ジルベルトが経営していた商売の権利が与えられることになった。元々、エラの父の財産を使って商売を大きくしていた事が判明したので、数倍になって帰ってきた形だ。
ターバンの男は近衛隊が突撃してきた混乱で逃げ出したのか、行方知れず。
王子と青銀の姫君はめでたく結婚する運びとなった。
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