3人が本棚に入れています
本棚に追加
「ここも返事なしか」
斎藤の言葉に、「えっ」と顔を上げる。
先ほど音がしたのは、確かに自分たちの目の前の部屋からだ。
それで返事がないということは・・・
早川の脳裏に嫌な考えがいくつも浮かんでくる。
「まぁ、確認するか」
「斎藤さん、先にみてくださいね!私アクシデントとかインシデントとか書きたくない」
「何の話よ、いきなり」
訝しむ斎藤だったが、ドアノブに手をかけ、ガチャリと音を立てる。
しばらくの沈黙。
「さ、斎藤さん?」
「あー・・・、はぁー」
斎藤が思わずため息をつく。
「あんたも入っておいで」
そう言いながら斎藤が部屋の中に入っていく。どうしようかと、入り口でオロオロする早川に、「早く」と斎藤が声をかける。
意を決して中を見ると、そこには先ほどの部屋と違い、ベッドが一つだけおいてあり、その横に誰かがうつ伏せで倒れていた。よく見ると、血のようなものが床についている。
「大丈夫ですか?」と斎藤が声をかけ、出血部位の確認をする。
「私、バイタルセットと止血道具持ってきます。あと、ドクターに連絡します」
倒れた際に頭を打って、どこか切れたか、それとも何かで体を傷つけた際に出血で倒れたか。
早川は頭の中で考えを巡らせたが、「あ、大丈夫です」という声に思考が止まった。
最初のコメントを投稿しよう!