狂人とは

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「ここも返事なしか」 斎藤の言葉に、「えっ」と顔を上げる。 先ほど音がしたのは、確かに自分たちの目の前の部屋からだ。 それで返事がないということは・・・ 早川の脳裏に嫌な考えがいくつも浮かんでくる。 「まぁ、確認するか」 「斎藤さん、先にみてくださいね!私アクシデントとかインシデントとか書きたくない」 「何の話よ、いきなり」 訝しむ斎藤だったが、ドアノブに手をかけ、ガチャリと音を立てる。 しばらくの沈黙。 「さ、斎藤さん?」 「あー・・・、はぁー」 斎藤が思わずため息をつく。 「あんたも入っておいで」 そう言いながら斎藤が部屋の中に入っていく。どうしようかと、入り口でオロオロする早川に、「早く」と斎藤が声をかける。 意を決して中を見ると、そこには先ほどの部屋と違い、ベッドが一つだけおいてあり、その横に誰かがうつ伏せで倒れていた。よく見ると、血のようなものが床についている。 「大丈夫ですか?」と斎藤が声をかけ、出血部位の確認をする。 「私、バイタルセットと止血道具持ってきます。あと、ドクターに連絡します」 倒れた際に頭を打って、どこか切れたか、それとも何かで体を傷つけた際に出血で倒れたか。 早川は頭の中で考えを巡らせたが、「あ、大丈夫です」という声に思考が止まった。
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