依存

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「早川さん、今日泊まってください」 17時15分 勤務時間が終わり、斎藤とそろそろ帰ろうかと話していた矢先だった。 二人が使っていた共同スペースにふらりとキツネが現れた。 「いやいやいや、無理ですよ。勤務時間終わりましたもん」と全力で断る早川。 「この後、何か用事でもありました?」と尋ねるキツネに「いや、別にないですけど」と口ごもる早川。 「あぁ、早川さんもそろそろ年齢的に婚約を前提にされた恋人の一人や二人いてもおかしくないですよね。申し訳ないです、そういうことに気づかないからよく注意されるんですよ。早川さん、とても魅力的な女性ですもんね」 「嫌味をふんだんに込めた口説き文句を、どうもありがとうございます」 「嫌味だなんて。僕は正直者ですから、思ったことしか言わないですよ」 ふふ、と笑い声をあげるキツネに早川は「クソッ」と悪態をついた。 「でも、さすがに日勤をしてから夜勤なんて、それは不可能ですよ」と横から斎藤が声をかける。どーだ、と言わんばかりに早川がニヤリと笑ってキツネを見る。 「そうですか。それでは無理にお願いすることはできませんね。わかりました。誰か代理の方が来られないか僕のほうで、院長先生にお話しさせていただきますね」 それでは、と一礼をしてキツネは踵を返し、階段まで歩いて行った。 「早川ちゃん、えらい気に入られたみたいね」と斎藤が早川を見る。 「いやいや、気に入られたというより、ただの使い走りにされるだけだと思いますよ。こいつなら、雑用任せても文句言わねぇだろうな、くらいに思われてるんだと思いますよ」と全力否定の早川。
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