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「早川ちゃんはどう思う?」
「私ですか?」
自分に話が振られ、早川は「う~ん」と唸る。
「有名人なら、私たち二人には任せない気がするんですけど」
「まぁ、口の軽い二人だからね」と斎藤がクックッと笑う。
精神科では個人情報が漏れることがあってはいけない。
早川も斎藤と同じく、頭で考えたことがすぐに口から出てしまう性質であった。最近は斎藤を反面教師にして、一呼吸置くことを覚えたが、そのことすら斎藤本人の前で言ってしまう。
「それよか、なんで私たちだけ別室待機なんですかね?やることいっぱいあるんじゃないんですか?」と早川が通された部屋を見回しながら口を開く。
別室に移動後、すぐに師長は部屋から出て行った。
残された早川と斎藤は椅子に座り、ただダラダラと話し続けている。
「どうせ、役立たず二人だから選ばれたんですよ。同期にも上司にも疎まれてますからね、仕事しない奴だって」
「早川ちゃんも私もねー」
二人とも、自虐的な言葉を吐き、同時にため息をつく。どちらも仕事をしないわけではないのだが、ただ要領が悪い。
まわりが1回説明を聞いてできることを、早川と斎藤は10回聞いてもわからないことがあるし、分かったところで、作業効率が悪く、時間がかなりかかってしまう。
そんな二人をご指名ときたら、「「厄介払い」」と二人が声をそろえる。
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