狂人とは

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「さっきから喋りすぎでは」 という声とともに、師長とスーツを来た若い女性が部屋に入ってきた。 「ノックくらいすればいいのに」と早川がぼそりと呟く。聞こえるかどうか、という声量に抑えていたはずだが、「これは失礼しました」と女性の顔が引きつる。 「今から患者の情報を渡します。お二人ともよく読んでください。それから、師長さんからも話があったと思いますが、この患者については一切他言無用でお願いします」 冷たい口調とともに、一枚の紙を渡される。 そこには患者についての情報が記載されていた。ただ、年齢や性別、名前すら載っていない。 あるのは、医者からの指示や許可、本人の入院時の希望。 「あの・・・・・・」 早川がある一文に目をとめた。 「この延命は望まないって書いてあるんですけど」 ということは年寄りか?年寄りが最後に休養目的で入院?精神科に?それなら、もっとあった病院やら施設やらあるだろうが、と一通り自分の中で自問自答、突っ込みまで行う。 「言葉通りです。それから、ナースコールで呼び立てた時だけ訪室してください。それ以外では、部屋に近づかないでほしいとのことです」と女性が答える。 「いやいや、食事やら風呂やら、与薬がありますけど」 「それも患者のほうから呼び立てた時のみでお願いします。他にご質問は?」 そう尋ねてきたが、女性の目にはもう口を開くな、という威圧感があった。 「ないようでしたら、私からは以上です。患者の退院についても、こちらから連絡を行いますので。それでは」 そう言い放ち、女性は少し荒くドアを閉めて部屋から出て行った。
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